リスクの概要:
旅行
現在の不正の状況
パンデミックから5年が経過し、世界の観光市場は見事な回復を遂げました。 2024年には航空旅行の需要がパンデミック前の水準を超え、グローバルな旅行は 前年比で引き続き緩やかな成長を見せています。 アメリカン・エクスプレスの2025年グローバル旅行トレンドレポートによると、世界中の旅行者は「情熱」と「実用性」の両面から旅に臨んでいるようです。
しかし、アメリカでは状況がやや複雑になっています。 2024年よりも2025年に旅行を計画しているアメリカ人が半数以上(56%)いる一方で、出費を抑えようと考えている人が多いようです。 そのため、アメリカでは国際的な旅行者の減少なども影響し、2025年には旅行収益が120億 ドル減少すると予測されています。
一方で、不正行為は世界中の旅行エコシステムにおいて依然として蔓延しています。詐欺師たちは、業界の脆弱性や旧式のテクノロジーの抜け穴を突き、新たな手口を次々と編み出しています。 旅行は依然として詐欺、特にフライトやホテル分野はリスクの高い業界であり、旅行業者にとって財務的、運用的、および評判上の影響があります。
主な課題:
この業界分析を行うために、Riskifiedの研究チームは航空会社やオンライン旅行代理店(OTA)、ホテル、バスや電車の輸送、そしてレンタカーを提供する旅行業者からの取引データを調査しました。
- グローバル展開: 新たな航空路線や宿泊施設の展開は、新しい旅行者を呼び込みますが、それぞれの地域特有の購買行動が決済や不正検知に影響を与えます。
- チャージバックの混乱:古い習慣はなかなか抜けないもので、パンデミック中に学んだ、旅行キャンセルによる返金を求める習慣(ときには虚偽の理由によるもの)を消費者はなかなか手放せません。 こうした行動や期待は今も残っており、旅行事業者にとってチャージバック対応の頭痛の種となっています。
- ロイヤリティのジレンマ:旅行者はポイント特典を好んでおり、今年は63%のアメリカ人がポイントを使って旅行する予定です。 一方で詐欺師にとっても、ポイントは換金性が高く、さまざまな方法で容易に現金化できるため、ロイヤルティプログラムは格好の標的となっています。
- 銀行のオーソリ承認率の低さ:旅行業界はリスクの高い業種であるため、決済の承認率が低くなりがちです。誤認拒否が発生し、事業者の収益や顧客満足度を損なう原因となっています。
警戒すべき最新トレンド
Riskifiedの研究チームは、旅行関連事業者を標的とする以下のような不正手口の増加や報告を確認しています。
偽のOTA
「Buy-for-you(B4U)サービス」とも呼ばれる不正なOTAは、ダークウェブ上のプロの詐欺師によって運営される偽のビジネスドメインで、SNSプラットフォーム上でも広く流通しています。 これらのサービスは、盗まれたクレジットカードやポイント、クーポンの悪用、またはその他の不正手段を利用して、正当な顧客の名義で予約を行います。その結果、顧客は市場価値よりも遥かに安い価格で支払うことになります。 詐欺師はその支払いを着服し、旅行事業者は本来得られるはずの収益を失うことになります。これは見かけ上は正当な顧客であっても、不当に安い価格でサービスを受けているためです。
ダークウェブにおける「B4U」サービスの例
ロイヤルティポイントの盗難
旅行に使えるポイントは、詐欺師にとってはまさに金鉱であり、ダークウェブ上の詐欺関連コミュニティでも頻繁に話題に上がっています。 報酬ポイントを狙った不正は過去10年で劇的に増加しており、世界全体での年間被害額は 10億ドル〜30億ドルにのぼるとも言われています。 ユーザー名やパスワードの組み合わせなどのロイヤルティアカウント情報は、わずか数ドル程度でオンラインに流出しています。 詐欺師たちはボットやフィッシング詐欺を駆使して大量のアカウントを一括で乗っ取り、保有ポイントやマイルを抜き取ります。抜き取ったポイントは現金化、ギフトカードへの交換、B4Uスキームへの利用、または自分名義の口座にマイルを移して個人の旅行に使うなどの方法で悪用されます。
不正の傾向
このセクションでは、旅行取引のセグメントにおいてRiskifiedが確認している共通かつ異なるリスクを検証し、高価値市場をどのように不正犯が悪用するかについての洞察を提供します。
フライトおよびホテル予約は、物理商品の業界やその他のデジタル商品と比べて、はるかに高いリスクプロファイルを示しています。 陸上交通は旅行分野の中では最もリスクが低いサブセクターですが、それでも多くの業界と比べると依然として高リスクです。
フライト予約
産業 リスク比較
2024年までの旅行取引データに基づくRiskifiedの分析によると、航空券取引はリスクが高まっており、フライトの予約は前年同期比でリスクが+14%上昇しています。
Riskifiedの分析に基づくさらなる洞察:
- 8月 の詐欺リスクは前年比で2倍に増加しており、旅行のピーク月であると同時に、予約において最もリスクが高い時期でもあります。
- 取引量の多い月 は詐欺行為も活発になりやすく、詐欺師は繁忙期の混雑に紛れ込もうとします。
- 直前の取引(出発の1週間以内に予約されたもの)は、事前に計画された注文と比べて一貫してリスクが高い傾向にあります。 詐欺師は、正当な顧客に比べて直前チケットを購入する可能性が80%も高く、これは航空会社側が直前の空席を埋めようと急ぐ心理を利用しているためだと考えられます。 また、出発まで時間がないため、チャージバック(支払い取消)を申し立てる猶予も少なくなります。
- 電話での予約は、eコマースおよび モバイルコマースでの航空券購入と比べて、2.5倍のリスクがあります。 電話予約の売上構成比は小さいものの、詐欺コストの最大10%を引き起こす可能性があります。
- 国際線は、平均的な注文金額が国内線チケットの約3.5倍であるため、一部の詐欺師にとっては魅力的なターゲットです。 航空会社にとって、国際線の支払いに関して誤った決定を下すことは、大きな経済的損失につながる可能性があります。
国際線出発 リスクレベル
高飛びする詐欺の手口
- フライトのカモフラージュ予約: この手法では、詐欺師が1回の注文で2つの航空券を購入します。1つは高リスクなプロファイルのフライト、もう1つは低リスク(通常は地理的な不一致を避ける)なフライトです。低リスクのチケットを「おとり」にすることで、販売側の不正検知システムをすり抜けようとします。
- 購入後のフライト日変更: 詐欺師は、数ヶ月前にチケットを購入し(前払いの購入は通常リスクが少ないと考えられます)、その後すぐに予約をより早いフライトの日付に変更し、初回の予約に使用した同じ不正使用されたクレジットカードで変更手数料を支払います。 もし販売側に「手数料の支払い」と「新たなフライト予約」の関連性を見抜く技術がなければ、2回目の取引は精査をすり抜けてしまい、詐欺が発覚するのはフライト後になることが多いのです。 (多くの場合、カード所有者が明細を確認しチャージバックを申請した段階で発覚します)
ホテル予約
Riskifiedの調査では、詐欺師が高級ホテルを狙い、高需要かつ高品質な滞在体験を求めている実態が明らかになりました:
最もリスクが高いのは5つ星ホテルですが、4つ星ホテルは利益面での損失が最も大きい可能性があります。 他のカテゴリと比べて4つ星ホテルのリスクは20%以上高く、潜在的な詐欺コストの最大シェアを占めています。
ホテル評価 リスクレベルへの潜在的な影響
なぜ高級志向が狙われるのか? 一般的な旅行者は、質を最大限に高めつつコストを抑えようとする、最良のバリューを求めています。 こうした背景から、顧客体験と満足度を重視する高級ホテルは、ダークウェブ上の売人にとって魅力的な標的となっています。彼らは、こうした高級体験を大幅に割引した価格で提供することで、より大きな機会が見込めると考えているのです。
高級ホテルを標的とするダークウェブの売り手の証拠
陸上交通の予約
6月〜8月は、電車やバスなどの陸上交通にとって、例年予約数が年間平均より約30%多いピークシーズンです。 詐欺師たちは、正規の購入者を装うため、こうした繁忙期に活動を活発化させ、7月・8月には不正の試行回数が2倍にまで増加します。そのため、この2カ月間は、通常月と比べて約40%も不正リスクが高くなっています。
実証された対策
チャージバックを自動化
旅行予約に関するチャージバック処理の一部、またはすべてを自動化することで、効率性を劇的に向上させることができます。 自動化は階層的な戦略として導入でき、例えば金額が小さい案件や処理が単純なケースには自動処理を適用し、複雑または高額なケースには専門の担当者が対応するという使い分けが可能です。 これにより、従業員はこれまで対応できなかった戦略的・重要度の高い案件に集中できるようになります。
旅行全体の流れを把握
一般的な消費者の夏休みや出張は、複数の国やサービスベンダーをまたぐ旅程になることが多く、旅行業者は、リスクを適切に評価するために、その全体像を可視化する必要があります。 計画的に早期予約された航空券や電車のチケットから、直前に予約された「疑わしい」取引まで、文脈を理解することが不可欠です。

アイデンティティに基づくソリューションで承認を最適化
旅行業者は、銀行の承認率が低い状況でも、適切な対策を講じることで承認件数を最大化できます。 インテリジェントな自動化と機械学習を活用し、リスクを正確に見極めながら、注文ごと、さらに旅行全体の行程の文脈に基づいてフリクションを最適化することで、収益性と顧客満足度を高めることが可能です また、詳細な市場インテリジェンスやネットワークを活用して注文を相互に関連付けることで、信頼できる旅行者と悪質な不正利用者を容易に見分けることができます。
Riskifiedのダイナミックなテクノロジーは、加盟店ネットワーク全体の規模でパターンを解析します。 機械学習を活用して、各予約のリスクレベルに応じた適切なチェックアウト経路を判断して、承認、不正拒否、または必要最小限の追加認証の実施を慎重に行うことで、旅行業者は不正注文を高精度で排除し、正規の売上を最大化することが可能になります。
Riskifiedとのパートナーシップ
Riskifiedは旅行業界の50以上の主要なマーチャントやOTAと提携し、毎年約5億件の旅行取引を処理しています。 旅行業者は、業界における極めて複雑なリスクを管理し、ビジネス成長を加速させるパートナーとしてRiskifiedを信頼しています。
リスク概観について
Riskified は、幅広い業界にわたる加盟店ネットワークを通じて処理された注文データを収集・分析しています。 このレポートでは、そうしたデータに加え、オンライン上の不正関連フォーラムから得た独自の調査結果やインテリジェンスを組み合わせ、業種ごとのリスク傾向とインサイトを提供します。
レヴ・ガル
Senior Data Analyst, Data Insights team