不正対策管理ソリューション
タイプの概要:長所 & 短所

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御社が新しい不正防止ソリューションを探し始めたという事は、事業パフォーマンスの改善を模索していると推測できます。そして新規のベンダーとの提携によって達成したい目標値を設定することでしょう。このブログでは次の2点をご紹介いたします: 

  • どんなタイプのソリューションがあるのか
  • それぞれの長所と短所

初めに、重要な留意点として、クレジットカード加盟店と不正防止ソリューションのベンダーとの提携は平均して3-5年です。一度ソリューションを導入したなら、相当な事象がない限り変更はしないものです。 この事からも、正しい選択をする為に、慎重な考察による評価が必要になります。 

過去5-10年の間で不正は激増しました。Eコマースの躍進に伴い、不正の手口も巧妙になり、機械学習の技術が主要な技術革新として注目されています。 不正防止ソリューションを選ぶ際に、提供されるソリューション内容や技術、ビジネスモデルをタイプ別で理解する必要があります。

ルールベースによるソリューション

テクノロジーの世界で機械学習が注目トピックとなる前は、不正利用者からの注文を防ぐ為に、ルールのセットを構築して不正防止対策がなされていました。このようなルールのセットは、詐欺の手口が頻繁に巧妙化するのに従って、手を加えて定期的に改修する必要がありました。新マーケットへの販路拡大や新カテゴリーでの新商品の販売 (例えば、滞在先の予約から航空券の購入までサービスを拡大したり、オンラインのギフトカードを導入するなど) によっても詐欺の手口は変化します。 

機械学習によるソリューション

機械学習の最大の利点は、人間の頭脳に比べ、守備一貫して効率的に莫大なデータポイントをカテゴリー毎にとらえ、分析することが出来る点です。機械学習ソリューションはプロアクティブ (先を見越して積極的に行動を起こす事) で、犯した間違いから学ぶことが可能です。これにより、人による介入なしでパフォーマンスや精度を改善することができます。正確度とモデルパフォーマンスにおける二つの鍵となる要因は、 

1) モデルの鍛錬に利用されるデータ

2) 関連した機能の追加、業界、市場の専門性を追及するためのデータサイエンスの質

スコアリングによるソリューション 

トランザクション (取引) をスコアリングによるソリューションで判定する場合、承認可否の結果が返ってくるというよりは、スコアの形式で推奨内容が返ってくるに過ぎません。加盟店はそのスコアを元に、承認、否決、3Dセキュア本人認証サービスの実施、または人による検証を実施するかなど方針を決めなければなりません。この場合、加盟店がチャージバックの責任を負います。通常、スコアリングのビジネスモデルでは、最終的に取引が成立 (承認) されたか否かに関わらず、トランザクション毎に課金されます。

チャージバック保証によるソリューション

スコアリングによるソリューションと違って、チャージバック保証は推奨内容ではなく、判定結果を提供します。 判定は2択で、取引を承認するか否決するかです。取引を承認すると判定を下し、結果チャージバックとなってしまった場合、責任が移譲し、不正防止対策のベンダーが加盟店に不正に関連するチャージバック代金を返金します。通常、チャージバック保証のソリューションは承認した取引における、取引額の割合 () で課金します。手数料は、取引のリスクに基づいて設定されます。 

それぞれのソリューションにおける長所と短所を見ていきましょう。

ルール・ベース

長所: 

  • 加盟店は、構築され、適用されるルールに完全なコントロールがあります。
  • 不正を防ぐ為に、加盟店は自社の特徴などを簡単にルール内容に反映することができます。 

短所: 

  • ルールは先手を打つプロアクティブな姿勢ではなく、リアクティブ (起こった事象に対して対応する姿勢) です。ルールはそれ自体が学ぶことはなく、不正パターンに合わせて変更するのに時間がかかります。その為、ルールが改修され不正の新パターンに対処できるようになるまで、不正の侵入を許してしまいます。
  • ルールを管理、改修するには大量なリソースが必要とされます。加盟店は頻繁に対応する時間を確保することが困難であり、その為、不正利用者が簡単に侵入できる結果となってしまうのは、よくある現状です。
  • 加盟店は、新しいルールが、何百と設けたルールにおいて実際にどの程度パフォーマンスの改善に効果的なのかを計測できる術がないことに直面します。
  • 新市場への参入、決済方法の更新や新商品の展開をしつつ、ルールシステムを維持していくのは、既存のルールが新市場や商品では合わないこともあるため、大変リスクの高いことであると言えます。新市場への参入時、加盟店は新しいルールのセットを構築するのに、まだ専門性と知識が欠けます。この事は、十分な知識が蓄積されるまでの間、加盟店は、高い不正リスクにさらされることになります。 
  • 加盟店は、社内データのみを対象にしている為、不正パターンを予め検知し、必要な対応を即時に取ることができません。加盟店が対応出来るタイミングというのは、新しい詐欺の手口に出会って初めてそれを認識し、新しい不正パターンに対応します。しかし、それでは時として遅すぎるのです。  

スコアリング

長所: 

  • スコアリングのソリューションは加盟店に、承認、拒否、または人による検証を必要とするのかにおいて、完全なコントロールと裁量を与えます。
  • スコアリングは、取引ごとの単価においてチャージバック保証よりも安い傾向があります。

短所: 

  • スコアリングのソリューションは加盟店と相容れない利害の不一致が常に存在します。不正防止ソリューションが十分な効果を発揮できていない場合、加盟店は高いチャージバック率や標準以下の承認率に悩まされるなか、不正防止ソリューションのベンダー側では判定した取引数に応じて収益が発生する為、実際の相関関係がありません。 
  • スコアリングのソリューションは常にといっても過言ではないほど、人による追加の検証を必要とします。スコアリングのソリューションは推奨される内容を伝えるだけなので、加盟店はレビューチームを利用してグレーゾーンの取引を判定するようになります。この人手による検証は規模拡大が困難で、顧客体験にも影響し、標準以下のパフォーマンスに陥ることがよくあります。
  • スコアの基準値を設定して、承認すべきか拒否すべきかの線引きをするのは大変困難です。例えば、12以下のスコアの取引は一律全て拒否すると決めた場合、12.14といったようなスコアが出た場合はどうしますか?基準値は頻繁に調整される必要があり、一部の取引は必然的に設定された値に近くなります。より複雑な不正対策を運用すると決めた場合、はっきりしないスコア判定が出た取引には、3Dセキュアを導入することを決めるかもしれません。 このソリューションの導入で当該のセグメントにおいて、加盟店は3Dセキュアに関連した、高い離脱率に直面するリスクを負うことになります。

機械学習

長所: 

  • 数百、数千の判定基準をひとつのモデルに集約して、より正確な判定を下すことが出来ます。
  • 先を見越して先手を打つ、プロアクティブな技術は、間違いから学び、人間の介入なしに改修をしていくことが可能です。 
  • 広範なネットワーク効果を利用する、プロアクティブなソリューションは、モデルが不正パターンや詐欺組織を早期に特定して軽減し、自動的に調整できるようにします。 

短所: 

  • 正確で質の良い機械学習モデルを構築するのは大変複雑です。モデルは業界や、時には地域にも特化したものである必要があります。一部のソリューションを提供するベンダーは、実際にはパフォーマンスが最適ではない場合でも、機械学習テクノロジーを使用することに満足しています。そして機械学習という言葉が加盟店の関心を引く流行りの単語として利用される傾向にあります。 
  • 一部のベンダーは、加盟店のデータサイエンスチームを利用して機械学習モデルの構築や改修に、積極的に参加してもらうことを期待しています。これは非常に複雑で、マーチャントのコア機能の範囲外であり、改修 (ルールの維持など) が必要であす。実際には効果的ではなく、最適ではないパフォーマンスを生む可能性があります。

チャージバック保証

長所:

  • チャージバック保証のソリューションでは、ベンダーと加盟店の利害は一致しています。承認した取引にのみ課金する (これにより加盟店に収益を生み出す) 為、ベンダーは出来る限り多くの取引を承認するよう努力します。ベンダーは不正に関連するチャージバックの責任を負う為、ベンダーはチャージバック率を最小になるよう努めます。
  • チャージバック保証ソリューションは、ひとつの注文に対して承認か拒否といった2択の明確な判定を提供します。これにより不正の基準値の調整をしたり、また追加の検証レイヤーも不要で、加盟店の不正対策を簡素なものにします。 
  • チャージバック保証のソリューションは、あらゆるAIソリューションの本質である、強固で一貫した、研究開発 (R&D) に尽力することを約束します。ソリューションを提供するベンダーがチャージバック費用に責任を負うため、高い承認率を維持しつつ、最新でもっとも革新的な不正攻撃を迅速に軽減することがベンダーの義務となります。その為、ベンダーは先手を打って、不正パターンを正確に発見するツールを開発するため、研究開発に重点を置き、研究開発による価値を高めます。 

短所:

  • チャージバック保証のソリューションは、通常最低月額費用がかかるため、毎月オンライン販売高が少ない中小企業より、大手の加盟店に適しています。チャージバック保証のソリューションは、承認した取引毎に数%の手数料を請求します。その為、加盟店はチャージバック保証のソリューションの導入によるROIがプラスであることを確認する必要があります。

様々なタイプのソリューションの長所と短所を認識することにより、より深いところに理解を得ることができます。